[Novels]

【無題SS - 01】
 この道を右に曲がれば、海へとたどり着く。
 毎日通る、学校へと向かう道の途中。その十字路で。
 海から吹いてくる潮風を感じながら、私はいつも、足を止める。
 この道を曲がれば。
 辿り着くのは、海。
 日々の繰り返し。その日常からわずかにズレた、非日常の、海へ。

 毎日がとても退屈だった。
 何をするでもなく、ただ無意味に過ぎていく。
 何よりも、何もしなくても、ただ、無意味に生きていける。
 すべてを環境のせいにするつもりはないけれど。
 けれど、確実に。環境は私に影響している。
 
 このままで、良いはずがない。
 早くどこかで、何かを変えなければ。
 きっと、この先のどこかで、大きな深みにハマる。

 そんな予感が、いつも周りに付きまとって離れない。
 先生の、授業の声が、ひどく遠くて。
 校庭に響く、サッカーか何かの声も、ひどく遠くて。
 となりで、授業中にもかかわらずケータイで喋りまくっているクラスメイトの。
 その声だけが何故か、やけに耳についたりして。
 不安定な自分を、感じている。

 あの道を曲がって、海へとたどり着いたなら。
 私は何か、変われるのだろうか……?

 いや、駄目だ。
 その為には、学校をサボらなければいけない。
 そんなことはできない。
 どんな些細なことでも。枠からはみ出ることは、できない。

 そうして、毎日はまた、無変化に過ぎていく。
 毎日、同じ十字路で立ち止まりながら。
 毎日、同じ不安定の中を漂いながら。
 流れて、流されて。主体性を持てずに。

 あの、十字路で。
 彼に出会うまで。

Index ・ Next →