[Novels]

【無題SS - 02】
 時折吹く風が強い。
 台風が近づいていると、テレビで言っていた気もするけれど。
 ハッキリ言って、そんなことはどうでもよかった。

 今日もまた、いつものように十字路で立ち止まる。
 私がたどり着けない、非日常。
 その海へと続く道。いつもと違う、人影。
 人影……?

 海から続く道。
 こちらに向かって、見覚えのある男子が歩いてくる。
 前期の生徒会長。3年生だ。
 よく見ると、全身ずぶ濡れらしい。
 白く乾いたアスファルトに、黒い足跡が点々と付いている。
 なんで、ずぶ濡れ?
 いや、問題はそこではなくて。
 なぜ……。

 私の視線に気付いた彼は、近寄ってきて言った。
「おはよう」
「え、あ、おはようございます」
「君、何年何組?」
「え? え、と、2年8組ですけど」
 なんだろう。
 なぜ、彼はそんなことを聞くのだろう。
 いや、それよりも、彼は海にいたのだろうか……?

「お願いがあるんだけど、いいかな?」
「なんですか」
「ちょっと、うっかり海に落ちてね。それで、」
 海に。
 海に行っていたのだ。彼は。
 心の中が、ざわめくのがわかる。
 彼も、非日常を求めていたのだろうか。
 彼は、日常を抜けて、そこに辿り着いたのだろうか。

 とまらない、心のざわめき。
 無変化だった日々が、終わった日。

 彼が海に求めていたものを知るのは、まだ少し先のこと。

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