[Novels]

【無題SS - 07】
 月曜日。
 いつもよりも1時間近く早く、家を出た。
 ほとんど走るようにして、いつもの、十字路へと向かう。

 この一週間は、一日一日がとても長く感じられた。
 と同時に、あっという間に過ぎ去っていったような感覚もある。
 一秒一秒の長さが、まるでバラバラであるような錯覚。
 落ち着かない、一週間。
 いつもと違う、一週間。

「おはよう」
 待ち合わせ時間よりも10分以上早く着いたのに。
「おはよう、ございます」
 彼は、既にそこにいた。
「早めに来るだろうと思ったんでね」
 私の疑問に、先回りして答える。
「行こう」

 もうすぐだ。もうすぐ、海へとたどり着く。
 日常から、わずかにずれた、非日常の海へ。
 ――君は何か、思い違いをしているみたいだから言うけど
 何がどう、思い違いなのか、わからないけれど。
 ――海に非日常を求めるのは、やめた方が良い
 そんなこと、他人に決められることではない。
 ――無駄だから
 何が、無駄だというの……?

 心のざわめきが、大きくなっていく。
 海の香りが、風に混じって心に届く。
 鼓動が早くなっていくのは、彼の歩調が速いから。
 それだけでは、なかった。

 次第に見えてくる、淡い光反射する、空。
 耳に届く、たぷたぷと揺れる、波の音。
 灰色の、テトラポット。海へのびる、コンクリートの突堤。

「あらかじめ言っておくけど、俺が君のために使える時間は、7時半までだから」
 振り返って言う彼に、ただ無言で頷きながら。

 私は、海を、目の前にしていた。

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